これはレコードジャケットです。この文章は、レコードジャケットに描かれたデザインです。こうしてジャケットにデザインをするのは、レコードをできるだけたくさん売るためです。ぜひこのデザインに注目してもらい、手に取るきっかけになればいいな、とおもっています。ジャケットを手に取って眺めていると、じっさいに音楽を聴いてみたい──今回ですと、XTCの「Go 2」というアルバムになるわけですが──という気持ちになってくるかも知れません。このアルバムを買ってください。なぜなら、より多くのみなさんがこのアルバムを買うことで、ヴァージンレコードの社長であるイアン・レイドと、XTCのメンバーたちにより多くのお金が入ってくるであろう、という目論みがあるからです。こうした状況には笑いが止まりません。さて、よいレコードジャケットのデザインとは、レコードを買う客をひきつけ、たのしみを与えるものです。この文章は、つい目が行ってしまうユニークな写真のように、みなさんの注意を引こうと試みています。あなたにこの文章を読ませるためにこそ、ジャケットはデザインされているわけです。これは落とし穴を作って人を落っことすみたいなやり方で、あなたはその穴に落ちました。しかし、もしあなたに自由意志があるのであれば、今ここで読むのを止めるべきです! なぜならわれわれが試みているのは、あなたにこの文章をさらに読ませつづけることだからです。このメッセージは、自由意志という点において、ふたつの相反する拘束力を持っています。もしここで読むのを止めたとしても、あなたはわれわれの言う通りに行動したことになってしまうし、逆らって読みつづけたとするならば、まさにわれわれが望んだ通りの行動をすることになるためです。そしてあなたがこの文章を読めば読むほどに、「いかにすぐれたコマーシャルデザインは機能するのか」という命題はより証明されていくわけです。これはトリックです。世の中にあるたくさんのトリックでいちばんだめなもの、すなわち「これはトリックですよ」と自ら宣言してしまう種類のトリックです。そしてここまで読んでしまったあなたは、自分がだまされたことに気がつきますが、ここまで読まなければだまされたことにすら気がつかなかったことになります。すくなくともわれわれは、みなさんをひっかけたことを正直に伝えましたし、うつくしい写真や、ぞくぞくするような映像を利用してごまかすようなまねだけはしなかった。われわれは、みなさんがこのレコードを買うべきだと考えているのですが、その中心的な意図として伝えたいのは、つまるところレコードは商品であり、商品は消費されるためにこそあって、あなた方は消費者であり、これは「いい商品」だということです。もちろん、バンド名をいかにもかっこいいフォントでデザインして、レコード店で目立つように工夫しておけば、それを見たあなたは、いずれにせよ買ったかも知れません。しかし、ほんとうにわれわれが示唆したいのは、ジャケットがかっこいいとか、かっこよくないとか、そんな理由でレコードを買ったり買わなかったりするのはばかげているということです。この説明も実は詐欺で、もしあなたがこの意見に賛成であれば、同時にこの文章──つまりはジャケットデザイン──を気に入っていることになり、それ故にきっと音楽も気に入るであろうと予想されるためです。しかし、ジャケットデザインがいいからレコードを買ったりするなどという発想はばかげていると、われわれはすでに警告してあります。この詐欺はありふれた詐欺です。いいレコードジャケットとは、それを見た人の購買意欲をそそるものですが、それはあなたにはあてはまらない、なぜならあなたはこの文章がただのレコードジャケットのデザインにすぎないと知っているからです。あと、これはレコードジャケットです。 (via
2008-06-20 - 空中キャンプ)